顔面神経麻痺の治療
顔面神経麻痺の治療 顔面神経麻痺では顔面神経につながっている筋肉が麻痺してしまうため顔つきが左右非対称になってしまいます。 左右非対称な顔貌は、不自然であるため患者さんは外出を避けるなど生活の質を大きく下げてしまいます。 当院では顔面神経麻痺の治療も行っています。兎眼に対してはまぶたにヒアルロン酸注射を、眉毛下垂については眉毛挙上術を、対側の眉毛挙上に対してはボツリヌス毒素を使用して、顔面の左右の対称性を出すようにしています。眉毛上部の傷は半年程度かけて徐々に目立たなくなります。 医療広告ガイドラインに準拠し、同意書を掲載します。 説明同意文書 顔面神経麻痺再建術(静的なもの)を受けられる 患者さん、ご家族のみなさまへ この説明書は、顔面神経麻痺再建術(静的なもの)について説明したものです。わからないことがありましたら、担当医にお尋ねください。治療を受けられる場合は「同意書」に署名をお願いいたします。 1.あなたの病名と現在わかっていること、病態 ・ 顔面神経麻痺 ・ 顔面神経は顔面の表情に関連する筋肉を支配している神経です。この神経が麻痺しているため、眉毛下垂、眼瞼皮膚弛緩、下眼瞼外反、兎眼などの状態をきたします。 顔面神経麻痺の顔 2.この治療の目的・必要性・有効性 ・ 眉毛下垂は表情に大きくかかわるため眉毛上の皮膚を切除して引き上げることにより表情を改善させます。 ・ 下眼瞼の外側や内側を短縮することにより眼瞼外反、兎眼を改善し、眼の表面の傷を改善します。 ・ 上眼瞼に対してはまぶた挙げる筋肉群(ミュラー筋や眼瞼挙筋腱膜)を切離したり、を純金の重りを使用したりすることで閉瞼しやすくします。 ・ 下顔面や口角の下垂により顔貌が悪くなっているため、これを引き上げます。 ・ どの程度効果があるかは患者さんの状態により個人差があります。 3.この治療の内容と性格および注意事項 眉毛拳上術 ・ 皮膚、皮下組織を切除し、眉毛上の皮膚を引き上げて縫合します。 外反症手術 ・ まぶたの外側の皮膚、結膜を切開し、下まぶたの靭帯の一部を切開します。余分な部分を切除し下まぶたの固い組織(瞼板)を上まぶたの靭帯に縫合します。皮膚を縫合します。状態により皮膚、結膜切開後凝固して靭帯を短縮します。 眼瞼延長術 ・ 皮膚を切開し、眼瞼挙筋腱膜、ミュラー筋を切除します。場合によってはシートを筋肉と瞼板の間に使用します。皮膚を元の位置に戻し重瞼となるよう縫合します。 眼瞼への重り挿入術 ・ 皮膚を切開し瞼板に純金の重りを挿入し縫合します。皮膚を戻し縫合します。 ・ 純金の重りの代わりに、ヒアルロン酸の注射を使用することがあります。 ・ 以上の方法を状態により組み合わせて何度か手術を行う必要があります。 フェイスリフト ・ 耳の周囲の皮膚を切開し、顔面を支えている腱膜を引き上げ、下垂した下顔面を引き締めます。 ・ ・ 術中にまぶたの形を確認するため主に局所麻酔で行いますが、フェイスリフトの場合など状況に応じて全身麻酔で行います。術前に痛みを感じにくいように鎮静剤を使用することがあります。 ・ 術後1週間、軟膏を使用してもらいます。術翌日からシャワー浴・洗顔・洗髪は可能です。創部に汚れがたまると不潔になりますので、毎日軽く洗い流すようにしてください。ただしまだ癒着していませんので強くこすることはおやめください。3日後からは入浴が可能です。約1週間で創部の化粧は可能です。経結膜の場合は翌日から入浴、化粧が可能です。術後に顔貌が大きく変化する場合があります。また術後に腫れますので創部が醜く見える可能性がありますが、完全に腫れが消退し、完成した状態になるためには6か月が必要です。 ・ 傷口に色素沈着が残るので術後6か月間は強い日焼けを避けてください。 4.この治療に伴う危険性とその発生率 ・ 手術により創部が腫れ、内出血が起こります。皮膚、結膜内出血は最初赤いアザのようになっていますが、黄色く変色し重力に伴って下方に移動しながら約3週間で消退します。腫れの消退は最初の2週間で8割程度改善しますが、完全な消退には約6ヵ月かかります。創部に血腫ができた場合は除去手術が必要です。 ・ 開瞼時、閉瞼時表情によって眉毛の位置やまぶたは変化するため完全に左右対称にはなりません。 ・ どの程度になるかは個人差があります。 ・ 術後に再度縫合処置をしたり、再手術を行ったりする事があります。 ・ 眼瞼延長術ではまぶたが下がりきらなかったり、下がりすぎたりする場合があります。下がりすぎた場合は挙げる手術を考慮する場合があります。 ・ 感染が起こり、創部が赤く腫れることがあります。特にゴアテックスシートや純金を使用した場合に感染が起こった場合は除去が必要です。 ・ 感染などで眼窩蜂巣炎になることがあります。 ・ 術中鎮静剤を使用した場合血圧低下、除脈、呼吸抑制などが起こることがあります。 5.偶発症発生時の対応 万が一,偶発症が起きた場合には最善の処置を行います。なお,その際の医療は通常の保険診療となります。 6. 代替可能な治療 ・ 下肢からの正常な神経の移植や麻痺のない正常な顔の神経を神経移植を行ってつなぐ方法、顔面の神経を移行して再生を得る方法、筋肉を移植する方法。笑うなどの動的な再建となりますが、侵襲も大きく手術時間も長いです。形成外科で行っています。 ・ 点眼、軟膏加療、テープ固定。症状の軽減にはなりますがなくなることはありません。 7. 治療を行った場合に予想される経過 ・ 術後、角膜びらんなどの症状がある場合は点眼の治療が必要です。 ・ ゴールドプレート挿入術では仰臥位では重力により開瞼してしまうことがあります。 8.何も治療を行わなかった場合に予想される経過 ・ 自然には治りませんので、結膜充血や角膜びらん、痛みに対して点眼、軟膏加療、テープ固定の永続が必要となります。 9.患者さんの具体的な希望 治療に関して何かご要望があればお伝えください 10.治療の同意を撤回する場合 いったん同意書を提出しても,治療が開始されるまでは,本治療を受けることをやめることができます。やめる場合にはその旨を下記まで連絡してください。